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ここでは,潜在ランク理論(ニューラルテスト理論)の便利な使い方をいくつか紹介します.

Can-Do Chart

Can-Do Chart(学力進度表)は,潜在ランク理論でテストを標準化するうえで最も重要なタスクであり,潜在ランク理論はCan-Do Chartの作成支援ツールであるといっても過言ではありません.Can-Do Chartの作成は,テストを資格試験化し,学力を段階評価するために必須のアイテムです.簡単にいえば,潜在ランク理論による分析で,たとえば,ランク2やランク4などと分類された受験者たちが,具体的にどういった学力を獲得しているかを記述したものがCan-Do Chart です.

Can-Do Chartの作成例

この例では,ランク数が5のもとで分析されています.項目参照プロファイル(Item Reference Profile, IRP)は,各潜在ランクにおける個々の項目の正答率を表しているため,各ランクに所属する受検者たちがいったいどのような項目群(個別学力)にパスし,どのような項目群が未学習であるかについて,考察することができます.それにもとづいてCan-Do Statement(学力進度文)を作成し,各ランクのおおよその学力プロフィールを記述することができます.Can-Do Statementの作成は,教科教育に深く携わっている専門家(教師など)と協力しなければ難しいでしょう.

Can-Do Chartを作成することにより,テスト実施者は,各ランクがどの程度の学力進度であるかを説明することが容易になります.ひいては,テストのアカウンタビリティが向上します.大規模公的試験ほどテストのアカウンタビリティは重要です.Can-Do Chartを作成することにより,教科学力の最終ゴールに向けての道筋が明確になるというメリットがあります.したがって,項目数が少ない状況でCan-Do Chartを作成するより,項目数が多い状況で作成した方が,より豊かな道筋が描けるでしょう.潜在ランク理論では,等化をすることによって項目プール(項目バンク)に項目を随時追加することができます.項目を追加するたびに,あるいは定期的にCan-Do Statementを見直すことが必要となるでしょう.

教科学力の達成を俯瞰できるような効率的なCan-Do Chartの作成はまだまだ検討する余地があり,どのようにすれば,さらに便利なものに仕上げることができるか検討する必要があります.

古典的テスト理論や項目反応理論など,連続得点によって学力評価を行う理論では,得点と学力の具体的な対応関係を記述することが容易ではありませんが,潜在ランク理論では,学力を段階的に評価するためにランクと学力の対応関係を記述することが容易です.

IRP指標

IRP指標は,熊谷先生が提案されたものです.個々のIRPの形状を要約して理解するのに便利であり,項目の特徴をいちいち図を見ることなく大雑把に理解するときに便利です.また,コンピュータ適応型テストにおいて,次に提示すべき最適な項目を選択するときに便利かもしれません.

項目困難度(item difficultyは,個々の項目の難しさを把握するのに便利です.βは,IRPがもっとも0.5に近いときの潜在ランクの位置であり,bはそのときの値です.

項目識別度(item discriminancyは,個々の項目の学力を測定する力を表現しています.αは,正答率の値の差が最も大きいランクのペアのうち小さい方の潜在ランクです.また,そのときの差の大きさがaです.差の大きさaが大きい項目ほど,ランクがα以上の学力の受験者と,α以下の学力の受験者を見分ける力が大きいです.

項目単調度(item monotonicityは,必ずしも単調増加しないIRPの単調増加性を要約しています.下のIRPの例では,隣り合う9つのランクのペアのうち3ペアで減少しています.したがって,減少率は0.333でありγで表現しています.また,cはそのときの減少量の総和です.